thinq

2006 年 9 月 14 日

CM音楽の製作

カテゴリー: MUSIC — admin @ 11:51 AM

最近多いCM音楽製作の仕事。 
元々映像の音楽には興味が深かったことはVisible:Stromatoliteを見れば一目瞭然なんだがけど、 
より一層突っ込みたくなりこの世界を味わうことにした。 

今回は2006年前半に放映された日立のプラズマテレビ Wooo のTVCM製作を例に、 
CM音楽制作がどのような形で作られているかを簡単に説明しようと思う。 
尚、製作の仕事をしているとどうしても公表できない事柄多いため、 
突っ込んだ表現は控えなくてはならないことを理解して頂けると幸いだ。 

CMというのはコマーシャルをうちたい方がクライアントとなり、 
広告代理店にコーマーシャル製作を依頼するところから始まる。 
プレゼン等様々な方法によって代理店が決定すると(詳細はよく知らないんだ)、 
代理店は映像関連の製作会社を決める。 
監督を決め、監督が指定する製作会社を使う場合や、 
作品コンテスト形式で数多くの製作会社から良いのを選ぶ(これを「プレ」と言っている)等 
これまた様々な方法がある(らしい)。 
映像関連が決定すると、それに従い演出も決定していく。 
この演出によって音楽制作が初めてCM製作に関わってくる。 
既存の曲を使うことも多く、 
この場合は音楽制作は行われず音楽制作費は全て楽曲使用料にまわされる。 
音楽制作をすることに決定すると、 
これまた星の数ほどある音楽制作事務所から一社が選ばれる。 
プレによる方法から指名などその方法は様々、 
商社拝謝(笑)の世界だ。 

今回僕の場合はS社から電話を受けるところから始まった。 
S社はTさんがお一人でやられている製作会社で、 
スタジオや製作ステッフを抱えないプロデュースを専門とする所で、 
目下売れっ子の方に違いない仕事量を持っている。 
Tさんがこれまたほれぼれするようなスマートな方で僕はとにかく大好きな方なんだな。 
30分弱の打ち合わせでイメージを伝えられ一通りの資料を頂く。 
資料は基本的に参考音源と「絵コンテ」と言われる演出の指示書。 
撮影が既に進行している場合は仮編集した映像を頂ける場合もある。 

 

絵コンテは(残念ながらぼかしてあるが)基本的には象徴的な場面が漫画風にかかれており、 
そのコマの秒数や台詞などの注釈が補足されている。 
最初は何がなんだかさっぱりだったが、 
慣れてくると絵コンテがあれば最終的な映像が想像つくようになる。 
映像を頂ける場合はやはりまだまだVHSでもらうことが多い。 
VHSテープはメディアコンバータでマックに吸い取り、 
QuicktimeにすることによってLogicに直接貼付けることができるので便利だ(Frameの設定には注意)。 

実際の音楽制作は基本的のこの絵コンテやQTの映像を見ながら行われる。 
ヨシヤ(DBD)に教わった事は、音に合わせたカットはダサイということ。 
映像には映像の持つテンポ感があり、それを見つけるところが始まりとなる。 
映像の何度も流しながら、足等でリズムをとりBPMを設定する。 
クリックをならしながら微調整することも多く、最終的に小数点以下のBPMも扱う。 
もっとも最近はBPM120にすると意外になんでも合うような気がしてきている(笑)。 
BPMが決まったら曲をかくわけだが、 
この画面でこの雰囲気のメロが欲しいなど細かい注文が多いCM音楽制作では普通に音楽を書くことは出来ず、 
2小節1拍半でBメロへ展開するという荒技はざらである。 
コード進行のトリックや変拍子を使ってなるべく自然に聞こえるフレーズを考えるのが今一番面辛い行事だと思う。 

Tさんには大体デモをAとBの2パターン作る事が多い。 
時たまCパターンを要求される場合もある。 
サンプル曲A 
サンプル曲B 
サンプルはTさんがOKを出すためのもので、代理店やクライアントを納得させるものではないので打ち込みで作る。 
何作か作った感じだと、曲の方向性やおおまかなテンションや臭いがわかれば良いみたいだ。 
TさんのOKが出ると次はスタジオに入りデモの録音をすることになる。 
このデモの場合は男女混成のコーラスを録音をしてミックスダウンした。 
デモ曲A 
デモ曲B 
出来上がったデモは製作会議にて代理店とクライアントにお聞かせする。 
結果少し怖いという印象からより明るい曲をタイプCとして作ることに決定した。 
曲自体は監督さんを初め皆さんに気に入っていただいた事が個人的には何よりな自信になり、次へ進むことができた。 
デモ曲C 
文句無しの明るいデモCは少し明るすぎたようで最終的にDパターンとして作った曲が採用された(喜)。 
CM仕事で流石と思うのはそのイメージに対する拘り。 
もちろんクライアントもそうなのだが、作る側としても本気だ。 
このデモ曲Cでもイメージの関係でカナダ人の女性シンガーを呼んでの録音だった。 
ただ歌が唱える女性ではなく、イメージを印象づけるようなシンガーを呼べるセッションは参加していて実に最高だ。 

さて曲が決定すると次は本番へ向けて色々と手直しする。 
ここにシンバル追加、ここのハープ強調、このティンパニーをなくすなどと修正を加え本番を迎える。 
最近のtaqの売りは一人オーケストラ。 
Akashicとかもそうなんだが一人で32人分のオーケストラを弾いている。 
ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ(コントラバスは打ち込み)を重ね録音しながらオケサウンドを作っている。 
ちょっとした隠しレシピがあって、倍音が重ならないようになっているので多重録音では出せないスケール感が出ていると自負できる品質にまでは成長したよ。 
今回のCMでもオケは自宅で録音している。 
RODE NT2 -> MOTU896HD と何の特筆事もない。 
本番用のデータは全て96kHzで作られ、各楽器を音声ファイルとして吐き出したマルチを持参しスタジオへ向かう。 

本番用のスタジオはSONYの乃木坂スタジオ、最近リニューアルオープンしたこの時代最後の本格的な大型スタジオだ。 

 
録音スタジオは地下三階にもかかわらず、写真のような開放的な廊下が広がる。 

 

 

 

ブースは一つのスタジオに対し5つあり、それぞれ反響や音色違う。 

 

おのぼりさんは置いておいて、コンソールはNEVEの8872でProToolsを全チャンネル立ち上げてのアナログミックスを行った。 
エンジニアはオケモノということもあって久石譲専属のHさん。 
このHさんってのがまたグルーブが合う人で大好きなんだよね。 

録音は前回デモのを録音したときのように男女混成のコーラスのみ。 
ここでまた不思議な再会があったのだが、 
駆け出しの頃可愛がって頂いた(bounceにも来ているよ!) 
大木理紗さんがコーラスシンガーとしていらしてた。 
彼女のHPのプロファイルも見れば一目瞭然な大先輩なのだが、 
自分の作品を唱ってくれる、それも偶然というのがどうにも嬉しかった。 
少し自分が成長したのではないかと思ってもいいような気がした。 

録音を終えた頃に代理店の方々がスタジオに入り、 
全体が申し分無いかをチェックした後にミックスダウンを経てマスターデータを作る。 
雑談を挟みながらミックスを待ち、終了とともにそれぞれがスタジオを後にして仕事は終了する。 

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