覚悟
僕はすこぶる健康だ。
ここ数年は三回程風邪ひいた程度だ。
酒も飲まないし、煙草も去年の今頃やめた。
身体が資本であるこの仕事において健康こそが将来性であり、
可能性であり、
そして責任でもある。
父はC型肝炎だ。
最近は肝不全に陥っている。
つまりそろそろ覚悟する時期だろう。
だが父にはまだ一つだけ生き延びる方法がある。
僕の肝臓。
みすみす健康な身体を裂き、
自分肝臓の6割を切り取る。
将来性0%の父の絶望は希望となるが、
代償として僕は自分の夢を追えなくなる可能性もある。
ここまでの道のりを大事にし、
父の意思である「可能性が多い命が優先」の考えを受け継ぎ育む。
僕の健康は損なわれず将来性も確保されるが、
おそらく父の命を自ら握りつぶした罪悪感から救われないだろう。
完全に負け戦である。
しかし覚悟をするくらいなら、
覚悟を決めよう。
来年は必ずオヤジと桜を見る。
